アスター、ASTRの報酬設計を大幅見直し

ブロックチェーンプロジェクト「アスター（ASTR）」は、仮想通貨ASTRのトークノミクスの再設計を実施したと発表しました。このトークノミクスの調整は、ネットワークのガバナンスによって正式に承認されたもので、ステーキング報酬がネットワークの実利用に連動する仕組みに進化した点が大きな特徴となっています。

トークノミクスとは、仮想通貨の供給量や配分、利用方法などを含む経済的な設計のことを指し、トークンの価値や持続可能性に深く関わる要素です。アスターは2023年に、固定されたインフレ率を採用する仕組みから、ネットワーク活動量に応じて柔軟に発行量が変動する「ダイナミック・トークノミクス」へと移行していました。これにより、ASTRトークンのインフレ抑制とネットワークの健全な発展が両立する設計が導入されてきました。

具体的には、報酬配分の仕組みとして、固定報酬を表す「BaseStakersPart」と、ステーキングされているASTRの量に応じて変動する「AdjustableStakersPart」が設定されており、これらの構成がネットワークの運用基盤となっていました。加えて、トランザクション手数料の一部をバーンすることにより、供給量の過剰を防ぐ工夫も講じられていました。

しかしながら、柔軟性を高めた新モデルにも課題があったとアスターは説明しています。特に、ステーキングの年利（APR）の急激な変動、インフレ率の上昇傾向、dAppへの報酬の不安定性などが問題点として浮かび上がっていたとのことです。これを受けて、今回のアップデートでは報酬構造が再設計され、ステーキング報酬の配分を見直す一方で、ネットワークに貢献する開発者やバリデーターへの報酬は維持されるよう工夫がなされています。

改定内容としては、BaseStakersPartを従来の25%から10%に引き下げる一方、AdjustableStakersPartを40%から55%に引き上げる調整が行われました。この変更により、報酬がよりネットワークの利用状況に応じたものとなり、参加者にとっての報酬予測がしやすくなることが期待されています。

今回のアップデートによってもたらされる効果として、アスターはまず「報酬の安定化」を挙げています。これまでのモデルでは年利が過度に上下する傾向が見られましたが、新設計により一定の安定性が保たれるとされています。さらに、ネットワークの需要に合わせてトークン供給が調整されることで、「持続可能なトークン発行」が実現できるとも述べています。

また、「インフレ圧力の低減」も重要な効果の一つとして注目されています。報酬の引き下げとバーンの仕組みが連携することで、インフレ率は今後さらに抑制される見通しです。アスターは、こうした経済設計の見直しが長期的なエコシステムの安定と成長につながるとの考えを示しています。

今回の取り組みは、ASTRトークンの価値維持とユーザーへの長期的な利益還元、さらには開発者やサービス提供者に対するインセンティブの最適化という三方良しの構図を描くものとされており、Web3領域における経済設計の先進事例として注目を集めています。

（参考）アスター、仮想通貨ASTRのトークノミクスをアップデート