ビットコイン採掘報酬、過去最低水準に迫る

現在、ビットコインのマイニングによる収益性が大きく低下しており、多くの企業が運営を続けるうえで損益分岐点ぎりぎりの状況に置かれているとみられます。マイニング関連データを提供するHASHRATE INDEXによれば、2025年4月22日時点で、1ペタハッシュ／秒あたり1日の収益はおよそ45ドルにまで下がっています。これは、2021年10月の強気相場時に記録した417ドルと比較して、90%以上の下落となります。

ビットコインマイニングの採掘効率に影響を与える要素のひとつが「採掘難易度」の上昇です。これは、ネットワーク全体のハッシュパワーの増加に対応し、ブロック生成時間を平均10分に保つために自動的に調整される仕組みです。2025年4月6日には121.5テラ（T）、同月19日には123.2Tへと難易度が引き上げられ、ブロック生成にはますます多くの計算処理が必要になっています。

さらに、インフレに伴う電力コストの上昇や、取引手数料の低下もマイニング業者の利益を圧迫しています。特に米国においては、マイニング機器の多くがインドネシアやタイ、マレーシアといった東南アジア諸国で製造されており、トランプ前大統領が発表した関税引き上げの可能性が不安要因となっています。現在は一時的に停止されていますが、最大36%の関税が課せられる方針もあったため、米国内の事業者には対応を急ぐ動きが広がっています。

その一方で、国内生産への転換を模索する動きも見られます。たとえば、シンガポールを拠点とするBitdeer社は、米国でのマイニング機器製造に向けた準備を進めており、供給網の見直しが進められています。

また、2024年4月に実施されたビットコインの「半減期」も、マイナーの収益低下に拍車をかけています。この制度により、新たに発行されるビットコインの量が半分に削減され、マイナーの報酬も比例して減少しました。これにより、多くの企業がマイニング以外の分野へと事業を広げる必要性に迫られています。

最近では、AI向けのデータセンター需要が高まっていることから、ビットコイン採掘施設の一部をGPU（画像処理装置）対応のデータセンターに転用する動きが出ています。米国のマイニング大手「コア・サイエンティフィック」は、GPUクラウドを提供するCoreWeave社と12年契約を締結し、自社施設の用途変更を進めています。

このように、ビットコインマイニング業界は現在、経済的・技術的な大きな転換期を迎えており、単なる採掘事業から次なるステージへの脱却が求められています。マイナー各社がどのようにこの困難を乗り越えていくのかが注目されます。

（参考）ビットコイン採掘の収益性、過去5年間で最低水準に