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イザカヤ編集部

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2024.12.09

  • 仮想通貨

  • 投資戦略Tips

【コラム】仮想通貨の基礎と今後の可能性

何かと話題に事欠かない昨今の仮想通貨。

ニュースなどでもよく目にするため、仮想通貨について興味を持ち始めている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、仮想通貨の基礎と今後の可能性について、国際経済の専門家である専修大学経済学部教授「小川健」氏にお話を伺いました。

なぜ2024年にビットコインが最高値を更新したのか、そして今後の仮想通貨市場はどのように変化するのか、気になる方はぜひ最後までご覧ください。

当コラムの執筆者「小川健」専修大学 経済学部 教授

仮想通貨(暗号資産)とは?

まずは仮想通貨(virtual currency)、及び今の仮想通貨の「法的な」呼び名である「暗号資産(crypto asset)」に関して取り上げましょう。
現代的な仮想通貨(暗号資産)の先駆けはビットコインであり、ビットコイン登場時に現れた「ブロックチェーン」に代表される分散型台帳技術が暗号資産の「技術的な」定義では大きく関わってきます。

実際にXRP(旧・リップル)という昔からある暗号資産のXRP Ledgerは「ブロックチェーンに含まない」説があり、広義の用語は必要です。
「ブロックチェーンを含んだ広義の用語としての分散型台帳技術を活用した、1点ものに限定していない電子的な交換手段」が仮想通貨(暗号資産)の或る種「技術的な」定義となるでしょう。

技術的以外の定義法として法的な定義があり、日本では仮想通貨(暗号資産)を規定する法律の1つに資金決済法があります。
2017(平成29)年に変わり、仮想通貨に関する法的な定義を入れた後、呼び名を暗号資産に設定しました(資金決済法 第三章の三「暗号資産」などを参照)。
資金決済法での定義を説明する日本銀行のHPがあります。

「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

暗号資産(仮想通貨)とは何ですか?

この説明には「ブロックチェーン」や「分散型台帳技術」という用語は出てきません。
法律上、分散型台帳技術とは全く違う「インターネット上でやり取りできる財産的価値」で、不特定の者に代金支払いで使えて、日本円と相互に交換でき、電子的に記録されて移転出来、(円や外貨等の)法定通貨や法定通貨建ての資産ではないものが出てきたら「暗号資産(仮想通貨)」と法律上は定義します。
法律には「制定時に法案作成者が想定していなかったこと」が適用時に起き得るため、その時代の固有の技術に限定しない書き方をします。

「仮想通貨(暗号資産)とは何か?」に関連して、「日本ではビットコインが仮想通貨(暗号資産)の法的な定義から外れるかも?」と心配されたことがありました。
(3)に「法定通貨または法定通貨建ての資産ではない」とあります。
楽天EdyやSuica, waon, nanaco等の「電子マネー」の多くは日本円建ての資産であって暗号資産ではないとの説明に使います。
法定通貨には日本円の他に外貨があり、日本と国交を結んでいる国の法定通貨を指します。
この法的な定義自体は「暗号資産」という用語が資金決済法で設定される前の2017(平成29)年頃に作られました。

また(3)に関連して、将来日本で日本円と価値を固定して暗号資産の技術を活用して価値を安定させたもの、つまり日本円連動の「ステーブルコイン」とその関連が本格的に出て来ると、「日本円建ての資産」は暗号資産ではないから、ステーブルコインも暗号資産ではない、となりそうです。
しかし、かつて米ドルなど各種の法定通貨と「価値を安定させた」と謳ったステーブルコインとして登場してきた中にはテラUSDのように資産の裏付けを十分に持たず、無担保プログラム型で回してプログラムのバグにより急に米ドルとの価値連動が出来なくなった事例もあります。
日本ではこの後ステーブルコインに関する新たな規制が2023(令和5)年6月に資金決済法に入りました。
ステーブルコインを「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」の2種類に分け、前者を「法定通貨且つ不換紙幣の価値に連動する価格で発行され、連動する不換紙幣と同額での償還が保証されるステーブルコイン」として、その裏付け資産に関して「当該信託財産は日本で免許を受けた信託銀行により管理される必要」がある形を念頭に、仮想通貨(暗号資産)とは切り離して資金決済法では規制・管理することになりました。

https://www.tkilaw.com/7049

https://fit.nikkin.co.jp/post/detail/tb077

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB24BKN0U4A021C2000000/

元々「ステーブルコイン」は「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「(金などの)コモディティ担保型」「無担保プログラム型」の4種類に区分されていました。
「無担保プログラム型」は仮想通貨(暗号資産)に含まれます。
対して「法定通貨担保型」に関しては(米ドルに連動した)テザーやUSDコインのように「裏付け資産」を持つ(香港ドルのような)「カレンシー・ボード型」に近い形が一般的でした。
しかしテザーの事例を基にすると、裏付け資産を使い込まれる危険性があります。
テザーは一時期価値が崩れかけた後、米ドル建ての短期的な債務である「コマーシャル・ペーパー」を裏付け資産として確保したため価値の安定は再び保たれ出しましたが、「法定通貨担保型ステーブルコイン」の裏付け資産を「他に委託して使い込めなくする」形を取る意味は有り「民間デジタル通貨」という言い方をします(「通貨」という使い方は強制通用力を念頭に置くため、この言い方には異論も存在します)。
旧Facebook(現:Meta)が目指し企画倒れに終わったリブラ構想は民間デジタル通貨の形でした。
今回の「デジタルマネー類似型」でのステーブルコインの規制は民間デジタル通貨の形を取っています。 

なお、この「委託だけ」で価値の安定を保てるかについて追加の指摘をします。
2023(令和5)年春のUSA(アメリカ合衆国)の一部中堅銀行倒産時に、USDコインの裏付け資産の一部が倒産した銀行の預金だったため、預金の全額保護が決まるまでUSDコインの価値が一時揺らぎました。
委託した資産が銀行預金の形の際に、その銀行が倒産した場合の預金保護が果たされる前提は必要になります。
日本だとペイオフと言って1 000万円とその利子までは法的に保護されますが、その先まで預金が保護される法的な裏付けはなく、資産を預けていた銀行の倒産という「外的な要因で」価値が揺らぐ危険性は同様です。

さて、日本と国交を結んでいる国の1つに中米のエルサルバドルがあります。
2001(平成13)年に現地通貨・コロンを廃して米ドル直接流上とした国である一方、USAと仲の良くない部分もある国です。
2021(令和3)年6月に「ビットコイン法」が制定され、9月に施行された結果、エルサルバドルではビットコインが(米ドルに次ぐ)第2の法定通貨として加えられました。
ビットコインは日本と国交を結んでいるエルサルバドルの法定通貨つまり「外国の法定通貨」となるので、(3)に照らすと仮想通貨(暗号資産)では無くなるわけですが、「ビットコインは(資金決済法上では)外貨か仮想通貨(暗号資産)か」参議院で質問趣意書として出ました。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/204/touh/t204114.htm

実際の答弁書ではビットコインは「外貨ではなく暗号資産」としているために、今でもビットコインは日本の法律上では仮想通貨(暗号資産)です。
この理解には法定通貨とは何か考える必要があります。法定通貨の法定は法・法律で定めた意味で、「通貨」という用語の意味を考える必要があります。
この部分が「仮想通貨から暗号資産に名称が変わった理由」にも繋がります。

通貨と似た用語に「貨幣」があります。法律用語ではなく経済用語としての「貨幣」で取り上げます。
貨幣(お金)を特徴づける3つの機能には(測れる・払える・貯められる、に相当する)「価値尺度」「支払い手段」「価値貯蔵手段」があり、この3つの機能がそれなりにあれば貨幣(お金:money)と言います。
それなりに、と付けたのは「価値保存手段」ではインフレ等を考えれば「ずっと全く損なわない」貨幣(お金)はほぼ存在しえないからです。

通貨は「流通貨幣」の略とされますが、流通つまり使えないといけない訳です。
貨幣(お金)には「支払い手段」の機能が求められますが、契約の多くはお互いに合意して成立しますから、対価として受け取っても良いと考えるものは通常、人・企業・お店によって違います。
以前ビックカメラで「ビットコインでの支払い」が認められたとニュースになりましたが、日本中の全てのお店がビットコインでのお支払いを認めている訳ではありません。
幾ら市場ではその代金あるいはそれ以上の価値を持つ貨幣(お金)でも、その人・企業・お店にとっては困る場合はあります。
世界で最もよく使われている米ドルでも、日本のコンビニで米ドル紙幣を出した所で使えません。

しかし「人・企業・お店によって」受け取ってくれる貨幣(お金)の種類が違うのは困るお話です。
それぞれに合わせて持参することになり、正確にそのお店で何が使えるか分からない状況や正確な支払金額が不明なまま行くなら使用金額より遥かに多めに持参する必要があることになります。
そこで法律にて「その国・地域の法律適用範囲内では」この手段で代金の支払いに使われた場合には受け取りを拒否できないという「法律で定められた支払い手段」を設定します。
「強制通用力」と言い、日本では日本円(の紙幣)が、USAでは米ドルが、フランスやドイツなどユーロ圏ではユーロが強制通用力を持ちます。
「強制通用力」により流通が滞りなく行え、「強制通用力」を法的に認められることで(その域内では)「流通」が阻害されない「貨幣(お金)」を「通貨」と呼びます。
日本では日本円の現金紙幣が通貨であり、外国の通貨を「外貨」とします。

ではビットコインは強制通用力を持つのか、これにはエルサルバドルのビットコイン法第12条が参考になります。
エルサルバドルでは元々2021(令和3)年当時の国民の7割が銀行口座を持たず、8割が携帯電話を持つと言われ、GDPの2割を超える金額が国外からの送金流入としてあり、現金社会故の送金手数料が問題になっていました。
銀行口座を持たない関係で送金手段が限られ、その受取先まで行く必要があり、手数料高騰だけでなく、受け取り後は米ドルの現金を持つことから犯罪誘発の問題もありました。
この手数料削減がビットコインを法定通貨に加える大きな目的の1つでした。
「全てのお店で何が何でも使わせたい」訳では無く、ビットコイン法第12条では受け取りが難しい場合に無理してビットコインでの受け取りをしなくて良いと読める文面が入りました。
これは強制通用力ではないため、日本の法律上は強制通用力を持つ外貨とはビットコインは扱わない、としました。
なおこの後に、中央アフリカ共和国が同様にビットコインを法定通貨に加えましたが、ビットコインは外貨でなく暗号資産です。

ビットコインを「外貨」とするにはその地域での強制通用力が必要です。
紙等の貨幣(お金)なら強制通用力は法的に定めれば済みます。
しかし、ビットコインのように電子的な手段での場合には次のような問題点が生じます。

  • 1)スマホ等の電池切れや待機中に落としてスマホを壊した、機材のエラーが起きた、のような「その人だけ」その場で使えない事態

  • 2)受け取り機材不所持のような「そこではずっと」受け取り手段がない事態

  • 3)ネットワーク障害や大地震のような「その地域全体で」使えない事態

お店側でも1), 2), 3)相当は起き得ますが「受け取り拒否」となってしまいます。
強制通用力では代金の支払いに使われた場合には受け取る必要があり、例外は基本許されていません。
現金なら受け渡しに物理的な支障は対面ならありませんが、電子的な決済方法が絡むと技術的な観点から強制通用力が満たし難い事案が起きえます。
とはいえ、この部分が解消される、ないし「一時的なトラブルは強制通用力の適用除外とする」とした場合、1), 3)はやむなしなら、2)に対応する整備をした場合や、1), 3)等にも対応する国が出てきた場合には、今回の「ビットコインは外貨か暗号資産か」等の問題は再燃します。
エルサルバドルのビットコイン法第12条は2)を免除したので強制通用力とはいえません。

「通貨」という用語はその「強制通用力」が法的に整ってようやくという部分があり、仮想通貨(Virtual Currency)に強制通用力は無いから「通貨」の語を含んだ仮想通貨と呼ぶべきではない、というのが仮想通貨から暗号資産に名称変更した理由の1つです。

「仮想通貨とは何か」の技術的な答えにも絡みますが、ビットコインに始まる仮想通貨(暗号資産)で開発された「ブロックチェーン」とは何でしょうか。
少なくとも「電子署名/公開鍵暗号」「分散型技術のPeer to Peer(P2P)」等既存の技術に「皆で監視」する「仕組み」を新たに組み合わせた技術と言えます。
「皆で監視」の手段の1つとしてビットコインでは「暗号を解いて」接続権限を決める「仕事量による証明」Proof of Work(PoW)が導入されたものの、「皆で監視」の方法は色々あり、例えばポルカドットや今のイーサが主に入れている「保有量の多い人にブロック接続権限を渡す」Proof of Stake(PoS)等の形、NEM等で入っている「直前の取引量が多い人にブロック接続権限を渡す」Proof of Importance(PoI)型など数多くの形があります。

「電子署名/公開鍵暗号」「分散性(P2P)」に「みんなで監視」という仕組みを入れます。
その代表格がProof of Work(PoW)で、問題点も含めて私の紀要原稿を参照しておきます。

https://doi.org/10.34360/00010849

粗く言うと履歴を基に作った暗号の「条件を満たすもの」を総当たりで探させる暗号を用意し、最初の発見者がブロック接続権を得てその仮想通貨(暗号資産)で報酬ゲットとなります。
総当たりで探すのでスパコン等を駆使します。
そうして、取引履歴の束をブロックのようにしてチェーンのように繋げるのでブロックチェーンです。
ライトコインや日本発のモナコイン等多くがPoW型を使っています(モナコインは2018年に攻撃を受けた後に変更が検討されましたが、2024年時点でPoWのままです)。

しかしブロックの接続法は他にも色々ある訳で、例えばポルカドットや今のイーサのようにPoS型を基本としたものだと「保有量」を大きく見せることが接続権を得る上で大事になるので、交換業者に「置いておく」ことで接続報酬が配分される「ステーキング」に繋がります。

PoW型に話を戻すと、ブロック接続は基本的に「長いもの」を採用するので、不正をしようとするとその不正をする部分を自分たちだけで「世界中と競って」長くし続ける必要があります。
1団体が集められる計算処理能力には限界があり、改ざんより接続に協力するための採掘(マイニング)をした方が早く報酬を得られるため、「改ざん意欲を削ぐ」仕組みになっています。
他の方法ではそれぞれのやり方で安全性を確保するのですが、PoW型だと「信用しなくてもいい」特性があります。

仮想通貨(暗号資産)は「1度記録したら基本的には改ざん困難な」ブロックチェーンをはじめとする分散型台帳技術を基に、電子的にやり取りができる仕組みに価値が付いたものです。

「信用しなくてもいい」部分を補足します。
ビットコインのオリジナル・ブロックチェーンをはじめとするこのやり方はマイニング報酬も含めて、全員が利己的に動いて回る仕組みで、トラストレスと言います。
しかし「裏切者」が出てきたときにもシステムはうまく回るのでしょうか。

このブロックチェーンにはその定義にも関わる「ビザンチン将軍問題」があります。詳しくは別の記載に譲ります。

https://diamond.jp/articles/-/269463

https://world-academic-journal.com/ogawat/

粗く書くと、皆で総攻撃をかけないと敵は倒せないが、お互いに信頼していないため、直接集まって話をできない状況を考えます。
裏切者で総崩れとなった関ケ原の戦いの西軍で、東軍大将の強大な徳川家康を総攻撃するか否か決める例を想定してください。

9人の武将が伝令を送ってやり取りをし、多数決で総攻撃か否かを決め、例えば4対4に分かれて最後の1人が決められる状況でその人が裏切者だったとします。
総攻撃賛成の4人には総攻撃反対を伝え、総攻撃反対の4人には総攻撃賛成を伝えれば、全員が揃わず失敗に終わり、裏切者の目論見は成功してしまいます。
こういう際にProof of Workでは1つ限定的な解決策を出しています。

仮に1種類の伝言を送るのに「1日かかる暗号を解く」必要があるとします。
2種類の伝言を送るには2日かかります。
関ケ原にいることはいるので解ければ割と直ぐ送れるのに、あいつだけ届かないのは、と分かる訳です。

こういうことを仕組みとして持つのがProof of Workです。
実際には色々な関連技術があり、様々な方法が考案されています。

なお、仮想通貨(暗号資産)と区別すべき1つにNFT(Non-Fungible Token)があります。
仮想通貨(暗号資産)は例えば「あの1BTCとこの1BTCは違う」等の区別は基本しません。
しかし「区別が付けられる方法」が有ると有難い場合があります。
そして分散型台帳技術の「一度記録したものはその後も改ざん困難」との特性を利用して(主にイーサリアム・ブロックチェーン等に)電子的にシリアルナンバーのようなものを記録して(いつでも確認できるようにして)1点ものの位置付けを明確にし、「同じ番号のものが複数出て来る」不安を解消しました。
NFTと呼んで、同種なら区別をしない仮想通貨(暗号資産)とは分けています。

ビットコインが2024年に最高値を更新した理由

今回の注目点としてUSAトランプ前大統領の返り咲きは欠かせません。

彼が暗号資産関連の業界を大統領選挙2024で味方に付けた部分はありますが、それだけですぐにではありません。
接戦と事前報道はされていましたが賭け業界ではトランプが勝つと高確率で見込まれていて、2016(平成28)年の大統領選挙のように「予測できずに」勝ったものではなく、例えば11/5(火)⇒11/12(火)という1週間でUS$換算にてビットコイン価格が約29.2%伸びる、等は「単に当選しただけ」では考え難いです。
新聞社・テレビ局等を主たる判断材料にする有権者は激戦州にもいる訳であり、結果が確定したためとは言えます。

では彼が返り咲くと、仮想通貨(暗号資産)業界の「何が」変わるのでしょうか。
今回のキーパーソンの1つにSEC(米国証券取引委員会)のゲンスラー委員長(Gary Gensler)がいます。
バイデン政権下で採用された1人ですが、トランプが返り咲くことでSEC委員長の座を追われる旨確実視され、2025(令和7)年1/20(月)に「クビを斬られる前に」自ら退任するそうです。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024112200258&g=int

ゲンスラーSEC委員長は暗号資産の業界に対してかけてきた「圧力」および暗号資産を株や債券等のような有価証券とみなす政策等を取ってきました。
暗号資産交換業者の世界最大手・バイナンスの資産凍結を求めて提訴したとか、交換業者大手のコインベースを提訴したとかあり、暗号資産は「必要ないもの」と考えていると報じられたトップ(委員長)が消えることは暗号資産業界には大きなプラスでしょう。

https://www.neweconomy.jp/posts/318001

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71709640X00C23A6ENG000/

米民主党系のハリス副大統領はバイデン政権の要人であり、バイデン政権がゲンスラーSEC委員長を任命したことも、ハリスが大統領選挙で暗号資産業界の支持を得られなかった理由でしょう。
暗号資産業界から考えればゲンスラーSEC委員長主導の下での各種提訴の中にはやり過ぎな部分がありました。

比較として日本は2018(平成30)年1月のCoinCheckのNEM流出騒動以降、仮想通貨(暗号資産)の交換業者として「日本で」交換業を営む上では許可が必要な形を適用しました。
NEM流出騒動のCoinCheckは正式認可のためにモネロやZcash等、プライバシーを重視した仮想通貨(暗号資産)の匿名通貨等を「犯罪に使われても追跡困難」と取り扱いコインから外した位です。
世界最大手・バイナンスは「日本における」本人確認などが不十分との観点を理由に元々日本参入不許可でしたが、各種整備をして「日本の交換業者として」許される範囲に絞って「バイナンスジャパン」として営業が認められました。
「或る種の安全性が確保された環境下で」運営する形になったのです。SECも規制するにしても色々なやり方はあった筈です。

ではゲンスラーの発想は何が問題だったのでしょうか。2点取り上げます。

1点目が仮想通貨(暗号資産)を「株や債券のような有価証券と同様の形の規制」に当て嵌め出した事です。
人間、未知のものが出て来ると既知の枠組みに当て嵌め出します。
これ自体が悪い訳ではありませんが、新しいものには既存の枠組みには無い特徴もあり、完全に無視して既存の枠組みに当て嵌めれば、発展するものも発展しません。

では仮想通貨(暗号資産)は既存の株や債券等の有価証券とは何が違うのでしょうか。
この鍵が仮想通貨(暗号資産)の持つ「貨幣(お金)の代わりの」役目です。
ビットコインにも「国によらないお金(貨幣)」の面はありますが、例えばイーサならNFTにおける「ガス代」(手数料)的な側面がありますし、ゲンスラー率いるSECが提訴した焦点の1つであるXRP(旧・リップル)にも、リップル・ネットワークでの媒介通貨代わりの側面や手数料代わりの側面が存在します。

株式なら大口の株主は会社経営に影響を与えうるため、一定割合以上の株式保有者は世に明らかにするルールがある訳ですが、貨幣(お金)の大口保有者だからと情報公開を求めるのは一般的ではありません。
株式や債券等の取引なら通常は税金がかかる訳ですが、貨幣(お金)のやり取りに有価証券同然の規制や税金がかかるのは取引委縮に繋がり易くなります。

2点目として、仮想通貨(暗号資産)には「作られた目的」や「存在目的」があるという点です。
例えばビットコインにはハイエクの「貨幣の脱国家論」構想を引き継いだ「国によらないお金(貨幣)」の部分に加え、人や組織への信頼によらない取引の信頼を実現する「トラストレス」の発想があります。
カルダノ(ADA)は胴元のいない公平なカジノ(賭け)を目指した部分があり、ギャンブルの他に保険の在り方を変える可能性があります。

ではXRP(旧・リップル)が持つ役割とは何なのでしょうか。
この説明で欠かせないのが「リップル・ネットワーク構想」です。

その説明の前に、ゲンスラー率いるSECが訴えるまでXRP(旧・リップル)や「リップル・ネットワーク構想」を提唱したリップル社が取ってきた「ビットコインとは違う」姿勢を取り上げましょう。
元々ビットコインは2009(平成21)年1/3に登場して以来、当初は一部関係者の間だけでのものでした。

2013(平成25)年に世に知られるきっかけとしてキプロスの金融危機がありました。
当時ATMからの引き出し制限等を通じて、金融危機だったキプロスからお金の持ち出しが制限されていました。
このときロシアへお金を避難させたかった一部投資家の間で、ビットコインに替えての送金手段が注目されました。
国際送金の手段としてビットコインは最初、権力に抗う形で注目された訳です。
これが後のG20での警戒感をはじめ、ビットコインが世界各国の金融当局に睨まれることに繋がります。

対してリップル社は元々リップル・ネットワークを提唱する際、銀行や国等各種既存勢力に比較的柔和な動き方をしてきました。
リップル・ネットワークとは「価値のインターネット」を目指して、世界のあらゆる銀行を、更にはあらゆる送金業者を、そしてあらゆる金融を繋ぐことを目指し、そのための潤滑油に近い形でXRP(旧・リップル)があります。
この意義を説明する上で、従来の国際送金の仕組みであるコルレス勘定取引を理解する必要があります。
こちらの資料を参照しましょう。

https://okanefuyasuzo.muragon.com/entry/18.html

コルレス勘定取引とは同じ中央銀行同士で繋がっていない「通貨圏の違う間での送金」に使う手段であり、主な国に外国送金を主に担える「コルレス銀行」を設定します。
日本で有名なコルレス銀行としては旧・東京銀行(今の三菱UFJ銀行)が該当します。
通貨圏の違うコルレス銀行同士はお互いの銀行口座を持ち合い、内部回線を繋いで(米ドル等に置き換えて)数字上でのやりとりで送金を行います。

この仕組みの問題点として、直接の口座持ち合いのない銀行同士だと経由が必要な点があります。
手数料も上がり、送金日数も増え、送金ミスのリスクも上がります。
どの経路で繋がるかは或る意味銀行任せです。早く安く、より確実に送る仕組みが作れれば、送金手数料も抑えられます。

リップル・ネットワークでは全銀行を同じ1つのネットワークに繋いでしまう事で電送並に早く安くより確実に(国内外問わず)送れます。
リップル・ネットワークは送金手数料を下げる可能性があります。

このためには各銀行の協力は欠かせませんが、銀行という業態は送金・決済を確実に行えるようにする必要があり、金融当局の監督下にあるため、業態としては保守的な傾向を持ちがちです。
そうした所に協力を仰ぐには権力に抗う姿勢では駄目で、リップル社は政府機関・金融当局や各銀行に融和的に動いてきました。

このリップル・ネットワークを稼働させる上で効果的に使う暗号資産がXRP(旧・リップル)ですが、ゲンスラー率いるSECはこのXRPの発行に際し「未登録有価証券」であり、既存の有価証券のような登録・審査が出来ていないとして訴えました。

https://coinpost.jp/?p=550215

実際には判決は出た訳ですが、US$1億2 500万.-:2024(令和6)年8月の判決時点で183億円相当の罰金がリップル社には課せられた一方、SECの主張よりはリップル社の主張の方が多く採用され、SECの訴訟での罰金要求額(US$20億.-)からは大きく減額されていて、リップル社のCEOのコメントの中には「これはリップル社、業界、そして法の支配にとっての勝利だ。
XRPコミュニティ全体に対するSECの逆風はなくなったと思う。」という説明が含まれていました。
とはいえ高額な罰金を科されるリスクがあれば委縮してしまう部分があります。
それはゲンスラー率いるSECがリップル社を訴えたからで、仮想通貨(暗号資産)業界に対し既存の枠組みに無理やり当て嵌めて委縮させたからでしょう。
主導者ゲンスラーの退場決定は、仮想通貨(暗号資産)の代表格であるビットコインの価格高騰にも繋がるでしょう。

なお第2次トランプ政権では仮想通貨(暗号資産)の政策に対する担当ポストを新設することが報じられました。
仮想通貨(暗号資産)の業界はトランプを推した分の効果は期待している訳です。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-20/SN9C8KDWRGG000

そして、こういう質問の場合には「他が」違う答えを出しているなら触れる必要があるでしょう。
2024(令和6)年11/22(金)のBSテレ東「日経モーニング+FT」ではこの質問に対し、3つの点を触れています。

https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/plusft/market/post_307716

1)トランプ当選の中で、7月のトランプ選挙中のナッシュビルでの発言「戦略的な準備金(Strategic Reserve)」が外貨準備につながる可能性(ブータンで事例あり)

2)機関投資家の投資拡大:ゲンスラーSEC委員長が渋っていながら認可に追い込まれたビットコイン現物ETFに関連して、他の仮想通貨(暗号資産)にETF認可が拡大する可能性

3)「半減期」のアノマリー:半減期が来る時期の後にビットコインの価格が上がってきた過去の経緯を基にした部分。4年に1度やって来て、2024(令和6)年4月に4回目の半減期。

まず2)に関連して「中長期的には」ビットコインの現物ETF認可の価格上昇の効果はあるでしょうし「色々な仮想通貨(暗号資産)にETF認可が拡大していけば」「中長期的には」価格上昇の効果はあるでしょう。
しかし、これをすぐに、というには少し慎重に考える必要があります。
そのためには「ETFとは何か」「現物ETFが認可されるとは」という部分を触れる必要があり、詳しくは私のこの記事をどうぞ。

https://jinacoin.ne.jp/ogawa-takeshi-covering/ 

ETFは上場投資信託ですが、資産運用の観点ではリスクに対する耐性等から「大きく集めてから」運用した方が分散投資・運用し易いと知られています。
小規模の個人・家計が少しずつ出し合って元手を集め、プロに運用を委託し、運用益が出たら出資した一部をもらう形が投資信託ですが、ETFは投資信託を「上場銘柄に限る」ことで市場が開いているどの時間でもすぐ市場価格で売却等できるものを指します。
ビットコイン等が個別のままだと機関投資家などが直接手を出し難いが、ETF内に入れば今まで渋っていた個人や機関投資家も参入し易くなるが、従来は余り認められてきませんでした。
旧来はビットコイン等の仮想通貨(暗号資産)の現物ETF・先物ETFとを考えると「ビットコインの現物を組み入れたETF」の方が規模は大きく、ビットコインの現物ETFが認可された方が「ハイリスク・ハイリターンな」ETFが組み易くなると切望する声はありました。

https://www.coindeskjapan.com/211451/ 

市場規模が大きいUSAで現物ETFの承認は中々行われず渋っていた部分が、裁判所によって(妥当な理由なき)非承認を許さなくする「判決」が出たため、2024(令和6)年1月にUSAでもビットコインの現物ETFが認められました。

しかし、ビットコインの現物ETFが承認されても直ちにビットコインのリスクや価格変動性は(大きくは)変わりません。
承認されてすぐ動く人はその前からビットコインに手を出している筈です。
先の「ハイリスク・ハイリターンなポートフォリオ」はビットコインの比率を増やして実現しますが、ビットコインの現物自体は買える以上、自分でそのポートフォリオを組めば現物ETFを通す必要はありません。

そうするとビットコインの現物ETFを「個人・家計として」手を出すのは「ビットコインに手を出したいがいつ売ったらいいか分からずプロに任せたい」と考える人等であり、「承認されて直ちに」動くとは考え難く或る程度時期が経ってビットコインの現物ETFが「一般的な選択肢として認知されてから」少し…の位であり、中長期的な効果に留まります。

では機関投資家はどうでしょうか。
ここも「承認されて直ちに」とは考え難いように思います。
ビットコインの現物ETFが承認されてもリスクが(大きく)変わる訳ではありません。
機関投資家としても「ビットコインの現物ETFが承認されたから直ちに」ではなく、様子を見て動く筈です。
中長期的な動きは言えても「2024(令和6)年のビットコイン価格上昇の主因」かは少し慎重に考えるべきです。なおこの点については2024年12/1(日)の日本経済新聞の記事で、同年3月末に比べてUSAのビットコインETFを保有する機関投資家が2割増え1200社を超えた指摘がなされています。「公的年金など長期保有を前提にする投資家が金(ゴールド)のようなインフレ耐性を評価し始めた。」と指摘されています。中長期的にはこうした部分が価格上昇に影響してくるでしょう。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO85163080Q4A131C2EA2000/

続いて3)の半減期アノマリーに関して「普遍性を持たない」指摘をします。
アノマリーとは「理由を説明できていない事象」です。
あくまでそういうアノマリーはあるだけで、今回のトランプ返り咲きのように他の要因が大きい可能性も否定できません。

そして1)の点に関して、確かにビットコインを「外貨準備として」持つという選択肢は将来的に広がる可能性はあるでしょう。
少なくとも第2の通貨としてビットコインを取り入れたエルサルバドルや中央アフリカ共和国等は持たないと動けなくなる部分はあります。

準備資産としてビットコインを、という発想を持っている経済学者はマシュー・フェランティ等いるにはいます。

https://news.bitcoin.com/ja/ekonomisuto-ga-chuo-ginko-no-junbikin-toshite-no-bitcoin-no-mikaihatsu-no-kanosei-o-setsumei/

ビットコイン政策研究所は「ビットコインを準備資産に加えるべき7つの理由」という報告書を出しています。

https://coinpost.jp/?p=569217

しかし外貨準備としての面では、それで介入や支払いができることが大きく、「多くの国でビットコインを『国を超えた』支払いの手段として利用している」とは言い難い現状では、この部分が「2024(令和6)年のビットコイン価格上昇の主因」とは言い難いかと思われます。

仮想通貨(暗号資産)の今後の展望

幾つかの観点をお伝えしましょう。

仮想通貨(暗号資産)の「レンディング(貸し出し)」が現状、銀行業界に大きな脅威でない前提があり、この前提が覆ることこそ仮想通貨(暗号資産)の将来展望が大きく変わるきっかけになるでしょう。

もし本当に既に大きな脅威ならもっと「外貨預金の」利子率は高い筈です。
ペイオフの対象でもなく為替リスクがある外貨預金の利子率と比べても現状の仮想通貨(暗号資産)のレンディング(貸し出し)での利子率は相当高いです。
この差の背景として、仮想通貨(暗号資産)の価値変動の度合いが大きい面はあります。
裏を返せば「それだけの利子率差が付かないと」現状はレンディング(貸し出し)で資金が集まらない訳です。

ここに関して、広義の意味での「ステーブルコイン」を利用したレンディング(貸し出し)を検討してみましょう。
価格が大きく揺らぐ・動くから利子率の差が必要になる訳で、「貸し出せる先」はそれだけの利子率を払える場合か、変動で利子率がカバーできると判断できる場合等に限られます。
ほぼ法定通貨に価値を固定される種類のステーブルコインならば、利子率の差が大きく出る意義はなく、ただ「オンラインで扱え、法定通貨とほぼ同じ価値」ならその利便性を残した形でのレンディング(貸し出し)が出来ると、より安い利子率でのレンディング(貸し出し)ができるでしょう。

預ける側としては高い利子率の方が有難い訳ですが、借りる側から見ると打開策として「ステーブルコインのレンディング(貸し出し)」は将来的に大事になる可能性が出ます。
通常の仮想通貨(暗号資産)より利子率は低く貸し出せるでしょう。

また、本来は「変動リスクを自分でコントロールできるようにする」基本的なデリバティブ市場整備がなされ、1個人が気軽にビットコイン等の「先物」等を買えるようになると望ましいでしょう。
エルサルバドルのビットコイン法定通貨化については、リスクコントロールのための市場整備とリテラシー教育がされていないので「失敗のように見える」点があります。

https://doi.org/10.34360/00012791

もう少し一般的な「今後の展望」を出しましょう。

仮想通貨(暗号資産)の今後の展望が明るいか否かは、(1)法定通貨(およびデジタル円等の「中央銀行デジタル通貨」)がどの程度信頼されるか、(2)仮想通貨(暗号資産)にどういう規制がかかるか、そして(3)どういう理想の社会を描けるか、が主に大事になります。

法定通貨の価値が安定しているならば、仮想通貨(暗号資産)の出る余地は少ないでしょう。
しかし、戦争等による法定通貨の不安定化やインフレ等での法定通貨の価値の毀損が起きると、仮想通貨(暗号資産)への逃避はよく見られます。
旧来なら金(Au)や「比較的影響の少ない別の通貨」に避難していたのが、ビットコインが登場して以降、ビットコインにも避難してきました。
実際に法定通貨がハイパーインフレで信用ならなくなったベネズエラでIT等のリテラシーのある層はビットコインを日常の決済に使っている部分があります。
またエルサルバドルはビットコインを第2の法定通貨に加えましたが「観光地では」政策の影響で使われてきました。
これらは極端な例と言えますが、何かが揺らいだ時に「代わりに」仮想通貨(暗号資産)を持つ、という判断は今後も行われていくでしょう。

一方で「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」が本格的に浸透させる中で、「仮想通貨(暗号資産)を禁止にする」国もあります。
例えば中国大陸ではビットコイン等の「不確実な」技術を「改良して」CBDCである「デジタル人民元(DCEP)」を登場させるストーリーを描いていると思われます。
浸透するかはともかく、ビットコインをはじめ旧来的な仮想通貨(暗号資産)には禁止など規制が入っていて、使い難くなる状況は起きています。

とはいえ、一般の人も使えるCBDC(リテール版)は導入された国・地域の中で本格的に浸透したのはカンボジアのバコン等数少なく、初めて世に出たCBDC(リテール版)であるバハマのサンドダラー等は一般には浸透したとは言い難いです。
CBDC(リテール版)が上手く浸透した際は「通貨代わりとして」仮想通貨(暗号資産)を使う可能性はほぼ無くなります。

運用・投資・投機先としての仮想通貨(暗号資産)の観点はもっと大事です。
ルール整備のための規制が入る場合とせっかくの機会・アイディアを潰す影響が出る規制とでも今後の展望は大きく変わります。

参考までに日本だとモネロやZcashなどの暗号資産は「犯罪に使われたときに追跡が困難だから」追放の動きがある事はお伝えしましたが、これに伴ってこれら「匿名通貨」が目標としていた「プライバシー」という部分の開発が弱くなる部分は触れておく必要があろうかと存じます。
旧来のビットコインをはじめとして、疑似匿名性つまり各IDがどういう取引をしているかの履歴は誰でも確認ができるものの、そのIDを誰が管理・保有しているのかは「通常は明らかでない」形です。

しかし、交換業者を通した取引については少なくとも、本人確認を義務付けることで限定的にIDと本人との対応関係は少しずつ出てきている部分に加え、警察捜査の努力等もありビットコインなどを利用した注目された犯罪の解明も進みつつある反面、プライバシーの議論は残ります。
もちろん、IDと本人との対応関係の「捜査機関への開示」は(逮捕や家宅捜索と同じ基準である)「裁判所の許可」に限定するなど、ルール整備次第で別の対応方法はある点も触れる必要がありますが。

各仮想通貨(暗号資産)には実現したい目標・夢があります。
今では5000種では到底収まりきらない種類が登場しています。
多くは一般の交換業者によって扱われない「草コイン」の域を出ませんが、時々それぞれの意味で優れたものが出て来えます。
また開発者は成功例から学ぶと共にその問題点や失敗例も学び、その後の世界を変え得るものが出て来る可能性は充分にあります。

1970年代のハイエクの「貨幣の脱国家論」が或る意味理想論でなくなったのはビットコインが登場してからです。
イーサの登場によって(電子的な)ものと仮想通貨(暗号資産)とが揃った時だけ契約の自動執行を可能にしてとりっぱぐれ等を防ぐ「スマート・コントラクト」が登場して以降、色々なブロックチェーンにスマート・コントラクトは付けられ出しました。

「優れたもの」を次々と取り入れ、要らない部分や問題と思う部分は削る形で今も色々な新しい仮想通貨(暗号資産)は色々な理想を実現しようと作られ、その横で新たに注目を集める種類の仮想通貨(暗号資産)が交換業者によって採用され、レンディング(貸し出し)やステーキング等交換業者を通して殖やせる方法も出て来ました。
業界全体の将来の展望として、ゲンスラー委員長等の「不当に制約する」方でも現れない限り、明るい部分はあるでしょう。

あと別に「交換業者や個々人のウォレットが攻撃される」だけなら、「システムそのものが」悪いとは通常なりません。
しかし、Proof of Work(PoW)型に限って話を進めると、ビットコインのオリジナル・ブロックチェーンへの攻撃が成功したことは2024(令和6)年11/26(火)時点でありませんが、他のPoW型のブロックチェーンに関してはモナコインやビットコイン・ゴールドでは2018(平成30)年5月に、イーサクラシックは2019(平成31)年1月にと攻撃を受けた事例があります。
51%攻撃等の攻撃の一種で承認された筈の一部が覆るReOrg(巻き戻し)が起きた事例があります。
先の私の紀要原稿はこの対策としてProof of Workを一種の「長寿命化する」ための提言の1つとして書いたものですが、一般にはProoof of Workを捨て、Proof of Stakeなど他のコンセンサスアルゴリズムに移るのが答えとされ、実際にイーサはProof of Stake系に移りました。

https://doi.org/10.34360/00010849

ビットコインのオリジナル・ブロックチェーンの1ブロック接続にかかる時間は約10分ですが、イーサリアム・ブロックチェーンでは約15秒です。
安全性確保の反面、10分経たないとブロックが接続されずに取引が承認されないなら商売なんか成立しない訳です(だからビックカメラなどビットコインで支払える場所の多くでは受け取って立て替える交換業者を嚙ませます。)

ビットコイン本体に戻ると、ブロックに書き込める量の限界の問題は2017(平成29)年頃には既に指摘されていて、当時は取引の一部がチェーンに接続してもらえない問題が指摘されていました。
ビットコイン等の分裂の多くはルールの合意が取れずに分裂していく訳ですが、チェーンに直接書き込む量を大幅に減らして「差額だけ」書き込み、普段はオフチェーン上の取引で済ませるライトニング技術等はこの中で注目されました。

さて、1つ大事な点を触れます。
仮想通貨(暗号資産)の代表格であるビットコイン自体は旧型の仮想通貨(暗号資産)である点です。
ビットコインおよびオリジナル・ブロックチェーンを参考に数多くの暗号資産および他のブロックチェーン・分散型台帳技術が登場しました。
ビットコインより優れた仕組みを持つ暗号資産は数多く登場している可能性が高く、ビットコイン自体が現在持っている役割は主に仮想通貨(暗号資産)内の「媒介通貨」の役割が中心です。
これはビットコインの時価総額が他の仮想通貨(暗号資産)に比べて高いことによります。

しかし最早その役割がビットコインで「なければならない」必要はありません。
ビットコインより優れた仮想通貨(暗号資産)と多くの人が認識する仮想通貨(暗号資産)が登場すれば、ビットコインが今の価値を保てるとは言えません。
今はまだ優れた技術を持っているものが出てきても直ぐに皆乗り換えるという気になっていないから、というだけです。

また、日本の税務を含めた法的な部分についても将来性を考える上で見逃せない部分があります。
日本での仮想通貨(暗号資産)の税務的な位置付けは「雑所得」ですが、税理士法人などに駆け込んでも中々適切に理解されていなかったなど、少し問題視すべき部分があります。

とはいえ、日本は割と世界の中では早い2017(平成29)年の段階では仮想通貨(暗号資産)に関する法整備を行った国であり、ステーブルコインに特化した法整備も「世界の中では」比較的早かった方でしょう。
日本もCoinCheckのNEM流出事件が起きた後は物凄く審査が厳しくなり、実際にそれで暗号資産の交換業者への本格参入を諦めた業者を見てきて悲しい部分もありましたが、日本の規制に関しては(モネロやZcash等をCoinCheckから諦めさせてから復帰させたり、バイナンスに関しても当初は本人確認が甘いとして認めないとしても対処を出来たらこじんまりと認めたりするなど)それなりに筋を通した部分はあります。
日本の規制は意欲を失わせ易いとは言われますが、「そこそこ安全性を考えて」入れている意味では或る種の安心感が持てます。

「規制の無い所でないと」意欲的な開発や発展はできない、というのは間違いです。仮想通貨(暗号資産)の業界に関して或る程度の枠組みがあるから安心して参加できる消費者・利用者もいます。

仮想通貨を始める人に対してアドバイス

まずは何よりも「何を目指している」仮想通貨(暗号資産)なのか、交換業者保管と手元保管にはどんな違いがあるのか、等仕組みを認識しましょう。

以前であれば仮想通貨(暗号資産)は「安全性を考えれば手元保管の1択だが、利便性などで交換業者に残しておく事案もある」という説明をしてきました。
しかし、(ビットコインには該当しませんが)ポルカドットなどをはじめとする(亜種を含めた)Proof of Stake (PoS)型の暗号資産にイーサが仲間入りをし、PoS型の暗号資産だからこそ「交換業者に置いておく」ことで期待できるステーキングの利殖部分、そしてIZAKA-YAさんなど幾つかの業者が動き出しているレンディング(貸し出し)での利殖部分などを考えると、タンス預金のように手元保管のみが優れている、という言い方はし難くなりました。

一方で、安全性を考えた場合に手元保管の意味は間違いなくあります。
交換業者には日々数多くの攻撃が晒されている中で各交換業者は必死にセキュリティを高めて防戦している訳ですが、手元保管の場合にネットから切り離しておけば、その部分は「パスワードなどを忘れない限り」安全性が保たれる訳です。
反面、パスワード等を忘れる、保存しておいたウォレットを無くすなどした場合には「鍵なき金庫」も同然です。

各仮想通貨(暗号資産)には理想・理念や登場理由が記されたホワイトペーパーがあります。
その仮想通貨(暗号資産)が何を目指して作られたのか、1度じっくり調べて、理念に共感できたものを少し「日本国内の交換業者を通して」買ってみては如何でしょうか。
利殖目的だけだと外したショックは大きいですが、理念に共感できたものは根気強く持ち続けられる場合もあります。
「日本国内の交換業者」なら金融庁に審査されて許可された種類しか扱えませんので、いきなり草コインに手を出すより余程意味があります。

そしてビットコイン等の現物ETFを持つ前には、1度実際にその仮想通貨(暗号資産)の現物を直接そのETFの割合で買ってみる体験をしてみてほしいです。
自分で直接買ってみて、これなら委託したいな、これなら自分でできるな、という肌感覚を持ってほしいです。

1番止めてほしいのは、どういう仮想通貨(暗号資産)なのかも分からずに、ただ何となく値上がりしていきそうだ、だから何となく買ってみた、というものです。
「全く勉強しない・学ぼうとしない人」には利益は長くは続かないでしょう。

イザカヤ編集部

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