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イザカヤ編集部

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2024.12.17

  • 投資戦略Tips

【コラム】個人年金保険は必要?iDeCoや国の年金との違いを徹底解説

「老後の生活費は国の年金だけで足りるのか?」

実際、現在65歳で受給できるモデル年金額(厚生年金40年加入)は23万円程度です。
しかし、状況によっては、今後40年かけて16万円程度まで減額されると予測されています。

このような状況下で注目を集めているのが、個人年金保険やiDeCoといった私的年金制度です。
国民年金のみの自営業者やフリーランスの方々にとって、将来の経済的な備えは喫緊の課題となります。

この記事では、関西大学の石田成則教授に、個人年金保険、iDeCo、そして自己投資の比較を通じて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく伺いました。
あなたの状況に最適な資産形成の方法を見つけるためのヒントが見つかるはずです。

個人年金保険とは?特徴と基本の種類

IZAKA-YA:個人年金保険がどういったものか教えていただけますか。

石田氏:個人年金保険は、個人が個別の金融機関と契約を結んで購入する保険の1種です。個人年金保険には以下のように、いくつかの種類があります。

1. 定期年金(確定年金と有期年金)

2. 終身年金

3. 夫婦連生年金

4. 変額年金

これらの様々な種類の年金を総称して個人年金保険と呼びます。

個人年金保険は保険契約という位置づけになるため、一般の貯蓄や資産の形成手段とは異なる特徴があります。
払い込んだ年金保険料は任意に引き出すことができません。
この流動性の低さから、個人年金保険料は他の保険と同様に、半強制貯蓄、または制度貯蓄と呼ばれています。

個人年金保険を途中で解約する場合、契約を解除することになります。
解約時には、払い込んだ年金保険料と利子が全額返還されるわけではなく、一定の金額が控除された解約返礼金のみを受け取ることができます。
このような特徴から、個人年金保険は一般の貯蓄型の資産形成手段とは異なり、保険商品として位置づけられています。

個人年金保険の選択基準と用途別おすすめプラン

IZAKA-YA:個人年金保険はどのように選べばいいのでしょうか? 

石田氏:個人年金保険には様々な種類がありますが、保険に加入する人の用途や目的によって、自分に合った個人年金保険を選ぶことが重要です。

個人年金保険には2つの大きな役割があります。

  1. 国の公的年金(国民年金や厚生年金)の上乗せとして、老後の生活費において国の年金で不足する分を補う役割です。

  2. 公的年金が支給されるまでの間、個人年金保険を受給して生活費を確保するというつなぎの役割です。

各加入者は自身がどのようなニーズや目的で個人年金保険に加入するのかが重要なポイントとなります。
例えば、一般のサラリーマンの方は厚生年金という給付を受けられ、かなりの金額を受け取ることができます。

一方で、自営業者や単身の方、個人で事業を運営している方たちは、国民年金という少額の国の年金しか受給することができません。

国民年金受給者の場合には、個人年金保険の上乗せの役割として、国民年金に加えて個人年金保険を受け取り、老後の生活費を賄うことが考えられます。
この場合は一生涯年金を受け取るために、終身年金という形態の個人年金保険がお勧めです。

比較的早く退職を考えており、国の年金が厚生年金などで手厚い場合は60歳から70歳まで、または60歳から75歳までといった一定期間、年金をもらう定期年金が適しています。
定期年金は「つなぎ年金」とも呼ばれています。

このように、各加入者が描く老後の生活や受給することができる公的年金に合わせて個人年金保険を選ぶことが重要です。

また、通常の年金は毎月の受給額が固定されていますが、保険会社の運用成績が良好な場合に多額の個人年金保険の給付を受けたい場合は、変額年金が適しています。
今後、景気が上向きで金利も上昇傾向にある場合には、変額年金が老後生活をより確実に保障することに役立つと考えられます。

個人年金保険と国の年金制度どちらが有利?

IZAKA-YA:国の年金と比べた場合、個人年金保険にはどのようなメリット/デメリットがあるのでしょうか。

 

石田氏:まず、国の年金制度(国民年金・厚生年金)では、労使折半の仕組みがあります。加入者が1万円払うと、事業主や会社も同じ1万円を負担し、合計2万円分の保険料に見合う老後の年金を受け取ることができます。

自営業者の場合、国民年金に加入しますが、事業主がいない代わりに、加入者が1万円払うと国が税金から1万円を負担し、同様に2万円分の保険料の年金給付を老後に受け取ることができます。

一方、個人年金保険では、全ての保険料を個人で負担する必要があります。そのため、運用効率や運用収益の面から国の年金制度に比べて不利な点があります。

公的年金は国が運営する保険のため、事務手数料等は全て国が負担します。個人年金保険では事務手数料も全て個人負担となります。
イギリスやアメリカでは、個人年金保険市場の競争が活発で事務手数料は抑えられていますが、日本では参入する金融機関が少なく寡占状態のため、事務手数料が割高になるというデメリットもあります。

また、国の年金制度には、老後の資産形成以外にも機能があります。
遺族年金や障害年金など、様々な生活上のリスクに対応しています。
しかし、個人年金保険は老後の生活費保障という役割に限定されています。

さらに、国の年金にはインフレスライド制があり、物価上昇に応じて給付額が調整されます。
個人年金保険の場合、例えば20歳時に契約した定額個人年金で60歳から70歳まで10万円受給する約束をすると、40年後の実質価値が下がっても給付額は変わらないという問題があります。

最後に、給付開始年齢の柔軟性についても違いがあります。
国の年金は65歳を基準に、60歳からの減額受給や70歳(将来的には75歳)からの増額受給が選択可能です。
個人年金保険は契約時に決めた受給開始年齢を変更できないという制約があります。

以上の点から、国の年金制度と比較すると、個人年金保険は様々な面で不利な立場にあると言えます。

iDeCoと個人年金保険の違い税制優遇と活用法

IZAKA-YA:老後の資金形成という観点で、保険ではありませんがiDeCo(イデコ)いう選択肢もあると思います。iDeCoと個人年金保険を比較した際に、資産形成のみを目的とする場合はどちらが優れているのでしょうか。

 

石田氏:iDeCoは個人型確定拠出年金であり、今後、国の年金削減分を補うという大きな目的があります。
現在65歳で受給できるモデル年金額は23万円程度ですが、状況によっては、今後40年かけて16万円程度まで7万円ほど引き下げられると予測されています。

国は年金政策として、国の年金と私的な企業年金や個人年金保険を合わせて、働いているときの平均給与の6割の水準(所得代替率)を保障することを目標としています。
しかし、この6割の水準を今後達成できない見込みがあるため、個人型確定拠出年金制度を創設し、税制上の優遇措置を設けています。

税制優遇措置については、小規模事業共済制度と同等の所得控除を受けることができます。個人年金保険は他の生命保険や介護保険と合わせて年間合計12万円までしか控除を受けることができません。しかし、iDeCoは概算でその2倍程度の控除を受けることが可能です。

ただし、iDeCoにも課題があります。
60歳などの定年退職する年齢まで資金を引き出すことができないという制約があります。
アメリカの制度では、途中解約時にペナルティ税金が課されますが引き出しは可能です。
ただし、教育費や住宅費、介護費などの特別な用途であれば税金なしでの解約も認められています。

国はiDeCoを公的年金を補完する資産形成手段と位置付けているため、使い勝手の面では制約のある制度となっています。
一方で、税制優遇措置は個人年金保険と比べて非常に手厚くなっています。

最近では、中小企業従業員向けにiDeCoを推奨する動きもあります。
従業員が1万円拠出すると会社も1万円拠出する「マッチング拠出」の仕組みが一部で実現しています。
マッチング拠出がさらに普及すれば、iDeCoは個人年金保険よりも有利になると考えられます。

このような状況もあり、個人が金融機関と契約を結ぶ個人年金保険の加入率は20%から25%程度に留まっているという課題があります。

個人年金保険と自己投資|運用方法と選択のポイント

IZAKA-YA:個人年金保険に加入するよりも、自身でインデックスファンドなどで積み立てしながら運用する方が有利なように思われますが、いかがでしょうか。

石田氏:実際に金融機関もその点を意識しています。
アメリカでは、生命保険や自動車保険などに最低限加入し、残りの資金を投資に回すことが一般的です。
ただし、投資には価格変動リスクがあり、大きな損失が発生する可能性もあります。
アメリカの加入者は積極的にリスクを取りますが、日本ではリスクを取ろうとする消費者が少ない状況です。

また、最近の保険会社は、個人年金保険でも平均的な投資商品よりも低い運用利回りしか保証していません。
しかし、運用利回りが高くなった場合には配当として還元し、結果的に平均的な投資商品より高い年金を支払う仕組みを検討しています。

IZAKA-YA:個人年金保険には国の補助がない以上、自分で投資した方がメリットがあるように感じますが、いかがでしょうか。

 

石田氏:個人年金保険の場合、保険会社は一般勘定で合同運用を行うため、運用損失が発生しても補填される仕組みがあります。

ただし、変額年金などの場合は、保険会社が分離勘定で一人一人の口座を作って運用するため、個人でインデックスファンドに投資する場合に近い形態となります。
変額年金は運用商品のラップ口座のような形で一括運用してくれるため手間が少なく、一定の人気につながっています。

IZAKA-YA:先生は個人年金保険での運用と、投資知識のある人による自己運用、どちらをお勧めしますか。

石田氏:インデックスファンドにもアクティブ型とパッシブ型があり、初期手数料(フロントエンドロード)や解約時の手数料(信託報酬)も異なります。
これらを比較検討した上で、自分に合った商品を選ぶ必要があります。

若い世代が積極的に投資できる仕組みを普及させ、投資商品やラップ口座、インデックスファンドへの抵抗感をなくすことが国の政策として重要だと考えています。
現時点では一概にどちらが有利とは言えません。

IZAKA-YA:起業家やフリーランスにとって、個人年金保険のメリットを最大限活用するための注意点はありますか。

石田氏:起業家の方は一括で個人年金保険を購入することが多いです。
税制優遇が少ない一方で、相続税や贈与税といった税負担が比較的軽いという特徴があります。
起業家の方は税金面も考慮して選択することが重要です。
個人年金保険は一般の生命保険同様、相続税対策としても一定の効果があります。

個人年金保険の市場動向と末置き型終身年金の可能性

IZAKA-YA:個人年金保険の需要動向について教えていただきたいです。

石田氏:現在、個人年金保険の加入率は20%をわずかに上回る程度で、非常に低い割合となっています。
過去5年の傾向を見ても加入率は減少し、加入金額も減少しています。

減少の理由には以下のような要因があります。

●      中高年層は保険や年金商品の見直しを行う傾向があります。

●      若年層のフリーランスや非正規雇用、派遣社員など個人で働く人々は、スマートフォンを使った投資は行いますが、将来の年金には関心が低い傾向にあります。

若い時期から積極的に投資できる仕組みを進めることは重要ですが、個人年金保険の普及促進については大きな対策が見当たりません。

ただし、1つの可能性として「据置き型終身年金」があります。
公的年金は70歳から受給を開始し、当初20万円程度の年金を受け取れていても、マクロ経済スライドにより金額が徐々に減少していきます。
長寿の場合、年金額が大幅に減少する可能性もあります。

据置き型終身年金は、60歳や65歳時点で一括で資金を投入し、70歳や75歳から死亡時まで年金を受け取る仕組みです。
公的年金の減額を補完する目的があり、60歳や65歳時点で一括払いし、5年間や10年間運用することで、支払う年金保険料を抑えることができます。

また、個人年金保険の特徴として、トンチン性があります。
トンチン性とは、死亡した加入者の年金受給権が消滅し、長寿の加入者が継続して年金を受給できる仕組みです。
国の年金と同様に、短命の加入者から長命の加入者への資金移転が発生します。

健康に気を配り、老後も就労により健康を維持できる人にとって、一時払いの据置き型終身年金は魅力的な商品となります。

将来性があるのは、国が税制優遇を通じて公的年金を補完する個人型確定拠出年金(iDeCo)です。
現在、65歳や70歳での介護費用のためにiDeCoを解約すると高額な解約控除が課されますが、制度をより使いやすく改善することで、老後の資産形成に有益な制度になると考えています。

個人年金保険の普及促進と投資教育|国の後押しと制度改革の必要性

IZAKA-YA:個人年金保険の普及には国の後押しが必要だと思いますが、どのような後押しが効果的だとお考えですか。

石田氏:国による支援として、現在、保険全体で年間12万円までの税控除があります。
個人年金保険を独立させて控除枠を別に設定することが1つの方向性として考えられます。

また、アメリカの制度を参考に、国の年金を補完する終身年金を選別的に優遇することも有効です。
国の年金の減額を補完する一時払い据置き型終身年金の意義を国が認めることで、選別的な優遇措置が実現できる可能性があります。

IZAKA-YA:現在、個人投資が身近になってきている状況で、投資と保険を組み合わせた商品設計については、いかがでしょうか。

石田氏:投資と保険の組み合わせは、アメリカですでに実践されている考え方です。
変額年金において、株価下落リスクを抑制するため、保険会社と他の金融機関が協力して最低保証金額をリスクヘッジする商品があります。
これは、GIC(Guarantee Interested Contract)という商品です。

GICはアメリカで一時期人気がありましたが、最低利回り保証の仕組みが複雑で分かりにくい点や、リーマンショック時に保証会社が破綻したことから、現在はあまり普及していません。
しかし、保険と投資を組み合わせる商品開発には将来性があります。

最低利回りを保証しながら上振れ収益を獲得する仕組みは、リスクヘッジ手段を含めると複雑になり、理解が難しくなります。
投資への理解が進み、投資耐性が高まれば、GIC契約のような商品を日本でも普及させることが可能かもしれません。
金利上昇や景気回復時には、保険会社と他の金融機関が連携したリスクヘッジ商品が有望になると考えています。

IZAKA-YA:保険や投資が進まない理由は、投資教育の不足が原因なのでしょうか、それとも制度の問題なのでしょうか。

石田氏:投資教育の問題は全体の2、3割程度だと考えています。
より大きな要因は、日本の従来の企業システムにあります。
1つの企業に勤め続けることで自然と賃金が上昇する仕組みがあったため、自己投資よりも企業への貢献を重視する考え方が定着しました。

現在は環境が大きく変化し、過渡期にあるため、自分自身で老後や生活上のリスクに備えるマインドセットの醸成が必要です。

まとめ

公的年金、個人年金保険、自己投資など、どの選択肢にもメリットとデメリットが存在するため、自身のライフプランやリスク許容度に基づいて最適な方法を選ぶことが大切です。
また、国や制度の仕組みの利点を最大限に活用することで、老後の生活をより豊かにすることもできるでしょう。

この記事で紹介した情報を活用し、あなたの老後資金計画の第一歩の参考にしていただければ幸いです。

イザカヤ編集部

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