ビットコインが8.7万ドル台に上昇、相場反転の兆しも

暗号資産市場において、ビットコイン（BTC）は前日比で約2.4％上昇し、1BTCあたり87,400ドルまで値を伸ばしました。テクニカル分析の観点からも注目すべき動きが確認されています。複数の専門家によれば、長らく価格上昇の妨げとなっていた下降トレンドラインを、今回ビットコインが初めて「サポートライン」として試しているとされ、相場環境に変化の兆しが現れているとの見方が強まっています。

実際、2025年初頭から4月にかけてのチャートでは、過去に何度もこのラインに接触しながら反発を許されてこなかったビットコインが、今回はラインを下回ることなく価格を維持しており、新たな上昇フェーズに入った可能性が浮上しています。しかしながら、こうしたブレイクが一時的な「だまし」で終わるリスクも否定できません。

市場の根本的な要因として注目されているのが、米国と他国との間で進行中の貿易政策や関税交渉です。特に米中間での通商問題は、金融市場全体のセンチメントに大きな影響を及ぼしており、ビットコインを含むリスク資産の値動きにも波及しています。こうした外的要因は、時にテクニカル分析よりも大きな影響力を持つことがあるため、慎重な対応が求められます。

仮想通貨関連の調査機関「Coinbase Institutional」による最新の月次レポートでは、市場は短期的には調整局面にあるものの、長期的な見通しは依然として明るいとする評価がなされています。現在、ビットコインおよび主要な仮想通貨インデックスは、200日移動平均線を下回る水準での推移が続いていますが、この動きの背景には世界的な市場混乱とそれに伴う投資家心理の悪化があると指摘されています。

モルガン・スタンレーが公表した投資家心理の指標によると、現在の市場センチメントの低下は、2020年3月に起きたコロナ・ショック時に匹敵する深刻な水準にまで落ち込んでいます。過去10年の中で大きな心理的落ち込みが観測された時期としては、2015年の中国経済の不安、2018年の貿易摩擦、2020年のパンデミック、2022年の利上げ局面、そして現在の関税問題が挙げられます。

Coinbaseの分析によると、単に価格の上下だけで市場を判断するのではなく、「リスク調整後のパフォーマンス」や「200日移動平均線」といった複数の指標を組み合わせて評価することが重要です。特に最近のように変動が激しい市場では、価格の動きと投資家心理との関係を包括的に捉える必要があります。

今後4〜6週間について、Coinbaseは市場環境の厳しさが続くと予測していますが、その後にはセンチメントの正常化とともに回復が進み、2025年後半には再び強気相場へと移行する可能性があると述べています。成長率13.2％の年平均成長率（CAGR）や新たな技術革新の進展が、長期的な成長期待を支える根拠となっています。

同社は短期的なリスクを踏まえた上で、今は戦術的に相場に対応することを勧めており、長期投資家にとっては今回の下落が新たな買いのチャンスとなり得ると指摘しています。市場の動向に対する柔軟な姿勢と多角的な分析が、今後ますます求められていくことになりそうです。

（参考）ビットコイン87,400ドルに上昇、下降トレンドラインをブレイク