コインベースに集団訴訟、情報漏洩の対応巡り

アメリカ最大の暗号資産取引所であるコインベースが、情報漏洩に関する対応や英国での規制違反を理由に、投資家からの集団訴訟に直面しています。この訴訟は、ブレイディ・ネスラー氏が米ペンシルベニア州の連邦裁判所に提出したもので、2021年4月14日から2025年5月14日までに同社の株式を購入した投資家を代表し、損害賠償を求めています。

問題となっているのは、2024年12月に発生した顧客データの漏洩事件です。この件はハッキングによるものではなく、インドに勤務する社員が賄賂を受け取って顧客情報を外部に流出させたものでした。パスワードや資金そのものには影響がなかったとされていますが、約1％の顧客が影響を受け、その対応費用は最大4億ドルにのぼると見積もられています。

しかし、コインベースがこの件を公にしたのは2025年5月15日であり、事件発生から約5か月遅れての開示となりました。この遅延が市場に動揺を与え、同日には同社株価が7.2%下落し、終値は244ドルまで落ち込みました。原告側は、こうした開示の遅れが投資家の損害を拡大させたと主張しています。

さらに、同社が過去に英国で金融当局との合意を破っていた事実も、今回の訴訟の対象となっています。2024年7月、イギリスの金融行動監督機構（FCA）は、コインベースの英国子会社CB Payments Ltd.（CBPL）に対して約6億7,600万円の罰金を科しました。これは、同社が規制に反して高リスクとされた顧客約1万3,000人以上に仮想通貨取引サービスを提供していたことが理由です。

この英国での違反についても、コインベースはナスダックに上場した際に公表しておらず、投資判断に重要な影響を与える情報を意図的に隠していたと原告側は指摘しています。罰金報道の後には、コインベース株が5%以上下落し、2024年7月25日の終値は231.52ドルとなりました。

また、米司法省はこのデータ漏洩事件に関連して捜査を開始しており、身代金を要求した犯人グループに対し、コインベースのアームストロングCEOが支払いを拒否。犯人逮捕のため、同額の報奨金を提示したことも報じられました。

現時点で、コインベースは本件に関する公式なコメントを出していません。今後、裁判所が集団訴訟としての承認を行うかどうかが注目されており、企業の情報開示とコンプライアンスの在り方が問われる展開となりそうです。

（参考）コインベースに集団訴訟、顧客データ漏洩に伴う株価下落で「重大な損失」